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姦通小説における妊娠・中絶はヒロインに対する懲罰か?――『美徳のよろめき』(つづき)

もう一つ、『美徳のよろめき』の自然をめぐって書こうかと思ったが、うまく展開できそうにもないので止めておく。それよりも、この小説をどう説明するか、ということをちゃんとやった方がいいかもしれない*1。 この小説の面白味(と言っては不謹慎かもしれな…

階級とロマネスク――『美徳のよろめき』(続き)

三島の小説には階級観念が現れる*1。この小説の節子も上流階級の出であり、その藤井家は「ウィットを持たない上品な一族」だとされる。躾も厳しく、門地の高い家に育ち、なお堕胎を三度繰り返すような淪落した女に節子が育ったのはなぜか。彼女は「私って娼…

肉体の狡知――三島由紀夫『美徳のよろめき』

『鏡子の家』は、読み物としてはそれほど高く評価しない。作者が登場人物に対して明晰すぎ、その宿命に至るまで見通しすぎている、というのが理由である。この小説についての作家の意気込み、同時代評の冷淡さ、三島の作品コーパス全体を見渡しての再評価、…

新潮文庫版『堕落論』解説、柄谷行人「坂口安吾とフロイト」

後半、やや奇妙な収録方針。 「今後の寺院生活に対する私考」「FARCEに就て」「文学のふるさと」「日本文化私観」「芸術地に堕つ」「堕落論」「天皇小論」「続堕落論」「特攻隊に捧ぐ」「教祖の文学」「太宰治情死考」「戦争論」「ヨーロッパ的性格、ニッポ…

フィフティーズ(2)、『鏡子の家』

作曲家のピエール・ブーレーズが先日世を去った。1925年の生まれ、満90歳の没である。三島由紀夫も同じ、1925年の生まれであるが、70年の没で、満45歳である。ブーレーズと同じ年に生まれながら、実に、半分の歳しか生きていない。一人の人間が45年間を生き…

阿部和重の『アメリカの夜』がどういう感じの小説か

昨日の投稿で、夢(夢よりも仕事について語るほうがもっとマトモだった気がする)がたとえ叶わなくとも、「問題は、むしろ、その夢を諦めたとき、どういう新しい道を選ぶか」、あるいは、どういう気持でその新しい道に向き合うかということが大切ではないか…