番組の途中ですがアラサー女子の妄想ウケ狙いの漫画に二言三言。

『東京タラレバ娘』(『Kiss』2014年5月号~)という東村アキコさんの漫画があります。アラサー女子の内臓を抉るタイプの漫画として人気と阿鼻叫喚を博しています。ぼくも好きです。コメディとして傑作で、三人娘の個性が際立ってていいですよね。あとタラとレバを産み出しただけでも語り継がれていい……強いて言うならバンギャの子と不倫の子はちょっと設定力入ってない気がするんですけど、まあ大事なのは倫子ですよね。33歳の女があるとき20歳前後のイケメンモデルに出会って恋なのかよくわからない関係のまま一度寝ちゃって……っていうのは妄想設定って感じですけど、この漫画のばあいはその妄想に対するパロディみたいになってるわけですよね。そのイケメンが事あるごとに少女漫画みたいなこと言ってんじゃねえと倫子を批判してゆく。

藤村真理さんの『きょうは会社休みます。』(『Cocohana』2012年1月号~)は綾瀬はるか主演でドラマ化されたときけっこう話題になりましたけど、ドラマってちょっとチープなキャラ付けをしちゃうところがあって、このばあいは「こじらせ女」なんですよね。各回のタイトルに「こじらせ女の~」ってついてる。アラサー(33歳)で彼氏いない歴=年齢の処女だったらそりゃ確かにこじらせてても仕方ない。でも本当はこの漫画のヒロイン全然こじらせ系じゃないんですよね。確か大学のとき憧れの先輩に一度ホテルに誘われたけど勇気なく、その後その失敗を未練にしながらずるずると……とかいう話だったと思いますが。それが大学生の爽やか青年とある日酒飲んだ勢いで寝てしまう。記憶ないけど処女喪失。あーそれで恋愛始まっちゃうんだよコレ。一回り年上の女性(年上もイケるみたいな設定はある)の若干面倒な性格も包容しつつ、一度もブレない感じの一途な愛。一緒にすもっか、から、結婚しよっか、までトントン拍子。ところがアラサー女子の妄想はそれでは満足できない。この同じヒロインを好きになる俺様系の男が現れる。会社の社長やってて一回倒産させるけどすぐにまた新しい事業を始める、リーダーシップあり、金あり、教養ありの持てる者がやたらとこのヒロインに興味を持ち、彼女を無理やり引き回し連れまわす。33歳は彼氏がいるのに、明らかに自分に好意を持っているこのメンズに引き回されるばかり。ちょっと考えてみてほしい、もし自分の彼氏をめっちゃ連れまわしてる大学生の女の子がいたらめっちゃ傷つくでしょう。なぜそこで「私彼氏いるんですみませんけど」と言えないのか、その意思のなさとなんだかんだで振り回されたいみたいな欲望が嫌い。そしてはっきりと言っておくがぼくは俺様系男子を憎悪する。許しがたい……。

最近ドラマが始まった中原アヤさんの『ダメな私に恋してください』(『YOU』2013年5月号~)。29歳の彼氏いない暦=年齢がヒロイン。癒しは年下のアイドルや男の子に貢ぐこと(100万くらい消費者金融に借金したりする)。突然会社が倒産、路頭に迷ったあげく相性最悪だった元上司が始めたレストランに賄い等欲しさでバイトし始める。まずこの漫画の表紙を書店で観た時点で、これは(俺には)ダメだなと気づく。見てくれ八巻の表紙。はっきりと言っておく、ぼくはメガネ男子が嫌いだ(漫画に出てくるやつ)。少女漫画に出てくるメガネはなぜいつも高慢ちきで軽くひとを馬鹿にしつつ素直じゃない恋心に気づいていってしまうのか。そういう要素が八巻の表紙に溢れている。そしてその期待は裏切られない。「ダメな私」はどの辺がダメかというと、恋愛経験のなさ、年下男性アイドル好みというのに加えて、頼まれたら嫌と言えない性格があって、でもまあそれ以外はそれほど悪いことばかりじゃない。容姿は少女漫画補正でかわいいので。問題はこのメガネで、元ヤン(勘弁してくれ……)で、ヤンキーの後輩たちにすごく慕われてて、だけど普通に仕事できる男で料理がめっちゃうまくてかわいい感じの料理作れるとかナメとんのか。しかも恋には一途で、昔から兄の恋人のことが好きである。ヒロインとは仲良さの裏返しの仲悪さがあるが、けっこう距離感近くて口元拭ってやったりとか色々と思わせぶりなことをして「こんなことされたら好きになっちゃうよお」みたいな感じになる。ナメてるのかと、言わせてほしい。はっきりと言っておく、メガネ割れろ。

(気付かないうちに口調が変わっている)